ポンペイ遺跡 「秘儀の間」の壁画
ポンペイ、ヘルクラネウム及びトッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域 / 世界文化遺産 1997年
紀元前2世紀頃に建てられたとされる、富裕層の邸宅「秘儀荘」内にある「秘儀の間」に描かれた壁画で、最も大きく保存状態の良い壁画。また、ポンペイ遺跡の中でも特に有名であり、考古学の観点からも非常に重要な壁画である。
この「ディオニュソス秘儀の図」という壁画は、ディオニソス秘教会への入信の儀式を描いたフレスコ画。
この時代のローマ元老院はでは、信仰の対象として国教以外のギリシャから伝わった秘教である「ディオニュソス教」の崇拝・信仰を禁じていた。しかし、実際にはローマ帝国の監視の目が届かなかったポンペイをはじめ、イタリア南部の殖民都市ではギリシャ文化が根強く残っていたと考えられ、ディオニュソス教信仰の風習が残っていたものと考えられている。ちなみに、ディオニュソスとは、ギリシャ神話の豊穣神、特にぶどう酒の神である。
2000年前のものとは思えない、その鮮やかな赤色は、「ポンペイ・レッド」と呼ばれる。絵の具には、石灰とロウを加えた石鹸水に赤錆色の顔料を混ぜて絵の具を作っていた。さらに、描いた絵を鉄ごて、大理石のローラー、磨き石などで磨き上げて仕上げられている。