海外旅行では日本と異なる衛生環境の中で過ごすことになります。良くも悪くも日本は世界一衛生環境が良い国であるため、日本人の菌に対する抵抗力は低く、日本消化器病学会の報告によれば海外旅行者の20~50%もの人が下痢にかかっています。
そのため、海外旅行で心配なのが下痢や腹痛という方は結構いらっしゃると思いますが、原因は衛生状態や食べ物の他に、疲れなども原因になり、同じ下痢でもその原因によって症状も違えば対処法も違います。
海外旅行で下痢は珍しくないが知っていれば簡単な予防対策で対処できる!
このページでは、下痢の症状と対処法、予防対策についてご紹介します。
目次
下痢の原因と症状による対処法・予防
「火が通った物だけ食べて、生ものも食べていないし、お水もミネラルウォーターだけで氷も口にしていないのに、なぜ下痢になったの?」 という経験がある方もいらっしゃるでしょう。海外旅行で下痢になった場合、「食べ物に当たったかも?」と思われがちですが、下痢の原因は食べ物以外に衛生環境にも原因があることが多いです。
例えば、衛生環境の良くない場所を触れた手で口元を触ったり、コップの飲み口を手で触ったりしただけでも下痢の原因である菌(バクテリア)は体内に進入します。また、意外な盲点として鼻をほじることも原因の一つ。ウイルスやバクテリアの付いた指を直接鼻の中の粘膜にこすり付ければ簡単に感染します。特に子供は要注意です。
このように、何らかの菌によって下痢を引き起こした場合には次のような症状が出るのが一般的です。
バクテリアによる下痢の症状
- お腹は痛くないけど下痢が止まらない
- 軟便を通り越して水のような便が出る
- お腹の中がチクチクするような痛みがある
- 額から脂汗が出る
- 熱が出てきて体がだるい
特に5つ目の症状は風邪の症状と勘違いしてバファリンやアスピリンなどの解熱薬を飲んでしまうと、熱が下がって治ったと勘違いして時間が経ち、症状を余計に悪化させることになるので注意して下さい。また、下痢だからといって下痢止めを飲むと逆効果なので飲まないように。下痢と止めてしまうとバクテリアが体から出て行かず、ずっとお腹の中に留めてしまうためです。
上記のような症状は、例えば日本人に人気の観光地であるトルコやエジプト、インドやタイなどの東南アジアで腹痛を起こす人が多く、その原因はほぼバクテリアです。その他にラテンアメリカもリスクが高い地域です。お腹の中にいるバクテリアを退治しない限り腹痛は治まらず、徐々に悪化します。早めの対処が重要です。
冷えよる下痢にもご注意!
特に東南アジアなど気温と湿気が高い気候の地域では、どうしても冷たいものばかり摂取しがちです。中でも意外な落とし穴となるのが南国のフルーツです。体を冷やす作用があるフルーツが多いからです。南国フルーツは美味しいですし健康的ではありますが、体内から体を冷やしてしまい、気付かぬうちに胃腸に負担を掛けてしまいます。特に胃腸の働きが鈍くなっているご年配は特に注意が必要で、若い人でも胃腸の冷えは自覚しにくいので意識することが大事です。
冷えよる下痢の症状は水便ではなく軟便で、常に下痢しているわけではなく通常よりもお腹がゆるい、胃腸の疲労感がある、食欲がわかないなどです。対処法としては冷たい飲み物は避けて胃腸を休ませることで、胃腸薬を飲むことで随分と改善できます。
代表的な体を冷やすフルーツ
バナナ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、スイカ、メロン、キウイ
ご覧の通り、南国のフルーツばかりです。ただ、食べてはいけないのではなく、食べる量に気を付ければ大丈夫です。気にし過ぎても旅行を楽しめませんので、軽く意識していれば良いと思います。
バクテリアによる腹痛・下痢の対処法
- 少しでもお腹に何か違和感を感じたら、すぐに添乗員や現地係員、頼る人がいなければ現地の薬局で症状を伝え、出来るだけ早く抗生物質を含む薬を入手しましょう。バクテリアを殺菌するためには抗生物質じゃないと効かないのです。
尚、抵抗力が弱い子供や高齢者の場合は、薬局ではなく出来るだけ早めに医師に診察してもらうことをおすすめします。 - とにかく早く薬を飲むことが重要。初期ならすぐに良くなるので、心配することはありません。
ちなみに、日本で処方箋無しで買える一般的なお腹の薬(正露丸など)には抗生物質が含まれていないため、絶対に利きません。飲んでも無駄です。海外では抗生物質を含む腹痛用の薬が薬局で簡単に手に入るので、現地で早めに購入しましょう。 - 現地のお腹の薬を飲んで2~3日間症状が全く改善しない場合は、予定を変えてでもすぐに医師に診察してもらいましょう。その際、何の薬を飲んで効き目が無かったのかも伝えて下さい。
中東諸国での腹痛や下痢の対処の裏ワザ
エジプトやトルコなどで下痢をしてしまった時のとっておきの対処法をご案内しておきましょう。この対処法は日本では全く知られていない裏技ですが、現地では広く知られている「おばあちゃんの知恵」的な下痢の治し方です。
- トルコ コーヒーを1杯用意
- トルコ コーヒーにレモン1個又はライム2~3個をたっぷり絞り入れる
- 混ぜたら、沈んでいる粉ごと全て飲む
作り方は非常に簡単。しかも、どのレストランでも食事の際に注文できるので、忙しいツアーでも気軽に実行できます。尚、砂糖やミルクは絶対に入れないで下さい。逆効果です。味の想像が出来る方もいらっしゃると思いますが、かなりまずいです(笑)
でも効きます! 初期の症状なら一日2~3杯飲めば治ることが多いです。薬ではないので副作用が無いのも安心です。ただし、効果があるのは「少しお腹がゆるいかな?」程度の本当に初期の症状なので、本格的な下痢になってしまっているようなら迷わず薬を服用して下さい。
国によって飲み方に若干の違いがありますが、エジプトではトルコ コーヒーが入ったカップが出てくるので、その中にレモンやライムを絞ります。トルコでは小さなお皿などにトルコ コーヒーの粉だけが盛られ、そこに直接レモンやライムを絞って練ります。つまり、ドロッとしたペースト状なので、飲むというよりは食べるという表現に近いです。
ツアーに参加している方なら、直接現地のガイドさんに言ってみてください。すぐに理解してくれるはずです。日本人の添乗員でこの方法を知ってる人は滅多にいないので、現地の人に頼みましょう。個人で注文する場合は、「腹痛のために注文したい」と伝えれば店員さんもすぐに理解してくれるはずです。
胃もたれからくる下痢の対処法と対策
バクテリアによる下痢以外にも、海外旅行で起こしやすいのが、胃もたれからくる下痢です。日本はお腹に優しい和食文化のおかげで、下痢をするほどの胃もたれになることはあまり無いと思います。しかし海外では、特にインドやネパール、トルコなど中東、北アフリカでの食事は非常に脂っこいため、食べ物に気を付けているつもりでも胃がもたれ過ぎて下痢をしてしまうことがあります。
胃もたれからくる下痢の症状は、痛みや発熱などはなく、単純に胃が重い感じで食欲がわかないことと下痢が長い間続くぐらいです。
この場合の対処法は、胃腸薬を飲んで思い切った食事制限をし、とにかく胃を休ませることが最善の対処法です。回復してきたらビオフェルミンなどの整腸剤でお腹の調子を整えればよりベストです。
海外旅行で下痢をした時の注意すべき大事なこと
いくつか下痢の原因と対処法をご紹介しましたが、バクテリアによるもの、胃もたれによるもの共に、共通の注意点(対処法)を下記にご紹介します。
- 油を使ってあるものは一切食べない
- 例えば、クロワッサンなどもバターを使っているため、食べてはいけません。
- 乳製品は一切食べない
- 牛乳やチーズ、生クリームもダメです。ただし、下痢の場合は薬を飲んだ後ならヨーグルトはOK(善玉菌による整腸作用が期待できる)。
- 砂糖が使ってある物も食べない
- ケーキなどは多量の砂糖が使ってあるのでダメ。コーヒーや紅茶も砂糖なしで飲んで下さい。フルーツの自然の甘味は大丈夫です。
- 胃を休ませる
- 2~3日間は消化の良い物を食べる。食べる量も腹7分目程度に抑え、夕食は通常の半分以下の量で抑えて寝る時間の4~5時間前には済ませる。お酒やコーヒーも飲まない。1日3食ではなく2食程度に抑えることも効果的。ただし水分補給はしっかり行うこと。
こうなると、国によっては食べる物が無くなりますが、パンやフルーツ、おかゆなどが最適でしょう。例えば、どの国でも手軽に食べられて消化が良い食べ物と言えばバナナ。栄養価も高くおすすめです。また、嘔吐がある場合は、無理して食べなくてOKです。ただし、脱水には注意して水分補給だけは忘れないようにしましょう。尚、スポーツドリンクは水分補給とエネルギーを同時に摂取できるので、何も食べられない時に重宝しますが、糖分が多いことが多いのが微妙なところです。
食事は旅行での大きな楽しみの一つですが、治す為には徹底して我慢しましょう。良くならなければ、いつになっても食事が楽しめません。
ウェットティッシュは殺菌力で選びましょう!
ウェットティッシュにもいろいろと種類があります。例えば除菌タイプ、ノンアルコールタイプ、消毒タイプがあり、この中で最も多く出回っているのが「除菌タイプ」です。
結論から言いますと、「除菌タイプ」では殺菌力は無いに等しく、衛生環境が良くない国では腹痛・下痢の予防対策になりません。
手の汚れを拭いたり汗を拭いたりする程度なら十分なので、欧米などの衛生環境が良い国であれば全く問題なしです。
では、衛生環境が良くない国ではどのタイプが良いかと言えば、指定医薬部外品の『消毒』タイプのウェットティッシュを選びましょう。消毒タイプは殺菌力が高いので腹痛・下痢の予防対策になるんです。
食事前に手を拭くのはもちろん、食事の前にコップの淵の部分やフォークやナイフを消毒タイプのウェットティッシュで拭くことでも腹痛・下痢の予防対策になります。
血便の場合は注意です!
血便の場合、大腸菌や細菌性赤痢、赤痢アメーバといった、少々厄介な細菌や寄生虫の可能性もあります。これらは人から人への2次感染もあるので、同行者も注意しましょう。具体的には唾液や排泄物に触れた場合はすぐに石鹸などで手洗い、うがいを心がけましょう。
言うまでも無いですが、この症状が出たらすぐに病院へ! 「まずは薬局で薬でも…」などと言ってる場合ではありません。