イスラム教とは - Traveler's Eye

当サイト代表によるコラムです。世界20周以上に渡る長年の旅で得た想いを綴ります。

イスラム教への理解 - 2006年5月27日


「イスラム教」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?

「危ない」「危険」「治安が悪い」「テロ事件」、「過激派」、こんな言葉を頭に思い浮かべる人は結構いると思います。これは日本人だけが抱いている感情ではなく、欧米でも同じことが言えます。

筆者が過去に「イスラム教についてどんなイメージを持っていますか?」と尋ね、「危ないイメージ」と答えた人に対して、「では、具体的に何が危ないんですか?」と再度尋ねてみると、間違いなくまともな答えが返ってきません。

では、実際にイスラム教って危ないんでしょうか? そもそも、イスラム教ってどんな教えの宗教なのでしょう?

イスラム教とは

イスラム教は預言者ムハンマドが現在のサウジアラビアで622年(イスラム暦初年)に開いた教えで、現在では世界人口の20%程が信仰している宗教です。

ムハンマドが生きていた時代のアラビア半島は部族単位で生活しており、部族間での争いが絶えなかった時代です。また、部族ごとに崇拝する神がいたため思想もバラバラでしたが、メッカは一大商業地として発展していき、ムハンマドも商人として大成功を収めた人物です。また、周囲からの人望も厚く皆から信頼される男だったと言われています。

そんな時代のある日、ムハンマドがメッカ近郊の洞窟で就寝中、天使より神のメッセージを告げられます。そのメッセージは「ひとつの神しか居ない」や「社会平等」といった内容です。その告げられた神の言葉をコーランという写本にまとめます。内容的には貧しい人の救済を掲げ、倫理や社会規範も示しており、宗教に忠誠しなさいという内容です。そして、重要なのはそういった「教え」を守ることで、偶像崇拝は大事ではないという事を強調しています。

既に触れているように、当時のアラビア半島は部族ごとに崇拝する神がいたため思想もバラバラでしたが、これを一つの神を崇拝することで人々の倫理や社会規範をまとめることが出来、貧富の差が激しかったメッカでは貧しい人の救済が人々に受け入れられやすいという事情、また、「キリスト教もユダヤ教もイスラム教とは違うが、同一の神を信じる人々だし融和的に接するべき」という考え方であったため、キリスト教やユダヤ教のように「どれか一つの宗教を選べ!」と迫ることをしなかったため、ムハンマドが説くイスラム教は一気に広がっていきました。こうして、部族社会から厳格なイスラム社会を築くことに成功していったというわけです。


つまり、イスラム教は本来温和で平和的な宗教であるということ

イスラム教というのは弱い人達の立場にたって物事を考える宗教で、とても純粋な考えを持った宗教です。そして、良い教えがたくさんあるんです。
例えば、「人を騙してはいけない」「人の物を盗んではいけない」「人に危害を加えてはいけない」などの教えがあり、イエメンという国ではこの教えに背いて盗みをはたらいた人は、盗んだ方の手を切り落とされるというのが近年まであったくらい厳格な宗教ですから、ムスリム(イスラム教の人々)はこれらの教えを守りながら生活をしている人が多いんです。

また、イスラム教の最も大事な教え5柱にもなっている「喜捨」という教えは、富めるイスラム教徒が貧しいイスラム教徒に金銭や食べ物などを差し出し助け合いなさいというもの。「断食」の教えは、断食を実践することで、お腹をすかせた貧しい人の気持ちを理解することなどが目的で、実体験することで相手の気持ちを理解しようというこれらの教えを見れば、弱者の立場にたった宗教であることがわかると思います。

ただ、教育レベルの問題から本来の断食の意味を知らないムスリムが多いのも事実で、何故断食をするのか?と尋ねると「体に良いから」「アッラーの言葉だから」などという答えが返ってくることもしばしば・・・。

それに比べて欧米などのキリスト教が大半を締める国々は、スリ、置き引きは日常茶飯事、アメリカのようにナイフや銃による脅しや強盗、殺人などなど、キリスト教としての節度は何もないのが実態です。

つまり何が言いたいかというと、イスラム教の国々の方が欧米よりも危険度が少なく平和的だということです。


しかし、多くの人がイスラムに対するイメージで良く思っていないという現実

これは、私たちの生活の中で偏った外の情報(ニュースなど)だけを聞いているからです。例えば、ニュースになるのは何か事件が起きた時など、悪い出来事だけが取り上げられるのに対して、良い出来事はニュースになりません。つまり、悪い出来事だけマスメディアによって聞かされているわけです。

わかり易い事例としては、日本でサリン事件が起きた時、このニュースは世界中に行き渡りましたが、日本の情報があまり無い国はこの情報だけを聞いて「日本はそんなに危ない国なのか」と本気で信じ込んだ人も多かったようです。でも実際に日本は世界の中でもかなり治安の良い国ですよね?
悪いニュースしか耳に入らないと、人は悪いイメージしか持たないものなんです。

ちなみに、テロ事件の多くがイスラム過激派(イスラム原理主義)によるものですが、一般的なイスラム教徒とイスラム過激派は考え方が全く違います。さらに、一般的なイスラム教徒たちはイスラム過激派に反対しています。
では何故、キリスト教では滅多に見られない過激思想がイスラム教では多発するのか? これは多くのイスラム教国が裕福ではなく教育レベルが低いこともありますし、イスラム教が他の宗教に比べて教えや考え方が純粋過ぎるため、その教えを守るためなら聖戦も辞さないという極端な思想に走りやすいということが言えます。また、宗教を悪用して権力や利益目的のために侵略行為をしてきた十字軍(キリスト教)を悪とし、欧米的な思想は人間をダメにするという考え方にも結び付き、余計に過激思想に走りやすくなってしまうというわけです。

筆者が以前、カイロのモスクの中でイスラム教徒の方とイスラムとテロ事件の因果関係について討論をしたことがあるのですが、そのエジプト人も「テロリストはイスラムの教えを守っていないからイスラム教徒ではない!」と力説していました。つまり、一般的なイスラム教徒と過激派の考え方は全く違うということです。


筆者がイスラム圏を旅して感じたこと

筆者はこれまでにアジア、中東、北アフリカなど何カ国もイスラムの国々を旅してきましたが、一度も「危険」を感じたことはありません。むしろ、人との触れ合いがこんなに素晴らしいものなのかと、とても嬉しい気持ちになりました。
イスラムの教えには「旅人をもてなす心を持ちなさい」というものがあり、元々は旅人=巡礼者という解釈だったわけですが、今では旅行者も歓迎でもてなしてくれます。

一般常識として、海外旅行の最中に親しげに近寄ってくる輩は、間違いなく何か企んで旅行者に近づいてくるものですが、このイスラム諸国についてはこれが当てはまらないのです(モロッコではそういう輩がいるが…)。何の見返りも期待せずに、心からもてなそうと近づいてくる人達に何度もめぐり会ってきました。

例えば、筆者がモロッコで大衆食堂の中を覗いていたら、その中の一人が筆者を見つけ、「こっちに来なさい!」と手招きしてくれ、仲間数人が自宅から持ち寄った食べ物を振舞ってくれたので2日間通い、「明日町を出る」と伝えると帰り際にお土産まで持たせてくれたり、シリアで道端で人に場所を聞いたら数人が集まってきて、皆で親身になって話を聞いてくれたり、モロッコで時計をスラれて周りの人達にそれを伝えたら「スッたヤツは見当が付いてるからここで待ってて」と言われ、取り返しに行ってくれ、何の見返りも求めず時計を手渡してくれたり。

トルコ東部では乗り合いバンに乗って移動の最中、隣のおじさんにバンの降り方を聞いたら降りる場所を運転手に伝えてくれ、さらに運賃を聞いたら後ろに座ってたおじさんが「俺が払ってあげるからここで降りなさい」と言われビックリ。一言も会話を交わさなかった見知らぬおじさんがです。

パキスタンでは長距離バスの横に座っていたお兄さんに目的地で安宿があるか知りませんか?と聞いたら、「私はその町に住んでるから、よければ私の家に泊まっていきなさい」と言われ、数日間そのお宅で食事までご馳走してもらったり(もちろん無償!)と、イスラムの人達の心優しさを語ったらきりが無いほど。


こんなに素晴らしい人達が多いのに、イスラムというだけで偏見の目で見られてしまうのは本当にかわいそうだし、悲しいことです。先入観ではなく、相手を理解する気持ちと本当の彼らの姿を知ってあげて下さい。そうればきっと、イスラムの人々に対する見方が変わってくると思います。


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