異文化は海外旅行の醍醐味ですが、海外の文化や習慣は日本と異なることが多く、トラブル回避のための注意点やマナー、常識非常識も様々。知らずに相手に不快な思いをさせぬよう、または被害に遭わぬよう常に意識したいものです。ただ、そうは言っても初めての海外旅行先で気を付けるべき注意点と言われてもピンとこないと思います。ただ、知らなかったでは済まされないトラブルも多々あるのも事実です。
そこで、海外旅行や出張の前にそういった文化や習慣の違いによるマナーや常識、海外旅行中の注意点をアドバイスします。
目次
世界の常識と非常識 各国共通の注意点
日本の常識・世界の非常識 という言葉もありますが、国が変われば文化も考え方も違うというわけで、国による常識・非常識が違うのは当たりまえ。特に治安に関する注意点は日本と世界では随分と違います。日本は世界トップレベルの治安の良さを誇る国であり、日本を常識の基準にしてしまうと世界ではトラブルに合うリスクが高いのです。
この項では日本人が気を付けるべき注意点をご紹介していきます。
- 日本の主観、常識にとらわれないこと
島国日本は良くも悪くも日本独自の文化を持っている国です。また、日本と発展途上国では、教育水準や生活水準に大きな差があり、「日本ならこんな事は絶対に無いのに!」という場面が必ずあります。
しかし、そんなことで怒るのはナンセンス。そこは日本ではないのです。また、日本人の常識を現地の人に押し付けないこと。「日本とは常識・非常識が違うのだからしょうがないか!」と考えておけば気も楽です。- 学生の貧乏旅行であっても「外国人観光客=お金を持っている人」
- 「小汚い格好をしていれば、トラブルなど狙われる事はないだろう」と考えないこと。注意点として、外国人観光客である限りそれなりに目立つため、常に標的になり得ると自覚することです。どんなに節約旅行をしているとしても、発展途上国の人から見れば「海外旅行が出来るお金を持っている人」と見られています。
- 高価なアクセサリーはTPOが大事
海外旅行のスタイルによっても多少違いますが、高価なアクセサリーを身に着けての観光はおすすめしません。治安の悪い国ではスリの標的になるだけでなく身の危険を伴います。現地に溶け込んだ服装がもっとも安全です。
ただし、お洒落なレストランや4つ星以上のホテルに行く場合は、アクセサリーで身を飾るのもマナーの一つになるので、お部屋で着替えるなどTPOを意識しましょう。- お洒落なレストランやディナークルーズなど “優雅” を感じさせる場所での振る舞い
“優雅” を感じさせる場所では、必ずそれなりの格好と振る舞いを。身なりはしっかりしていてもスパゲティを蕎麦のようにズルズル音を立てて食べていたり、ジャケットとシャツできめているにもかかわらず足元がスニーカーだったり、明らかに周りと比べてラフな格好ではみっともないうえに、周りの雰囲気をぶち壊すので迷惑行為です。
また、一般的にラフな格好が普通であるアメリカやアジアでの注意点として、少し名の知れた高級レストランでは必ず普通以上の格好をしていくのが常識。リゾート地であっても夕食時に短パン、サンダル姿での入店は非常識です。- 意思表示はハッキリと!
断る時はキッパリと! 言葉がわからないからと、日本人特有の意味不明な笑顔を浮かべないように。相手は「馬鹿にされてる」と感じてトラブルのもとになることも。海外でのコミュニケーションでは顔の表情も大事な要素であることが注意点です。
また、日本では “察する文化” が常識であり、言われなくても相手を思いやったり空気を読んだ行動をすることが出来ますが、実はこれ、世界では珍しい習慣で、基本的にどの国でも言葉や表情で自分の意思を相手に伝えるというのが常識となっています。つまり、自分から伝えなければ相手は何もしてくれず、こちらの事情など察してくれません。表情もしっかり出して意見や要望を伝えましょう。- 写真撮影が禁じられている施設が日本以上に多い!
ショッピングセンターなどの建物では写真撮影が禁じられている事が多いです。また、特に厳しいのが国境や軍事施設では要注意。最悪 拘束されかねません。
また、美術館や博物館では、フラッシュを光らせなければ撮影を許可している場合が多々あります。その場合は自動でフラッシュが光らないよう、確実にOFF設定しておきましょう。設定方法がわからなければそのカメラで撮影しないように。美術品を傷める行為は「知らなかった」では済まないのです。実際に再三の注意にもかかわらずフラッシュ撮影が後を絶たず、撮影そのものが全面禁止になってしまった施設は多々あります。- 教会、モスクなどの宗教施設に入場する際は、肌の露出を避けること!
キリスト教やイスラム教だけでなく、仏教寺院でも制限がある場所も多々あります。
注意点ですが、教会では男性の帽子は脱帽する(女性の場合は脱帽の必要なし)、モスクでは女性の場合は頭を布で隠すなどの決まりがあるので、必ず決まりを守ること。イタリアの大聖堂に短パンで入ろうとするアメリカ人が入場を断られている場面をよく見ますが、このような行動は宗教に対する認識不足の表れです。
- 自分から離れた荷物は二度と戻らない!
どこかに忘れ物をした場合、9割以上戻ってこないと思って下さい。海外ではホテルの客室に忘れた場合でも戻ってこない事があるほど。明らかにホテル従業員が関与してるのでしょうが、証拠が無い以上泣き寝入りです。
警察に遺失物の届出を出したところで戻ってくることはまずありませんが、帰国してからの保険請求に必要な場合もあるので届出できるならしておくことをおすすめします。
欧米諸国での注意点 常識や非常識
- ゆっくり食事をする習慣
一般的にワインなどを飲みながら会話を楽しんで、ゆっくり食事をする習慣があります。例えばヨーロッパのレストランでは、夕食に最低1時間半はかけるので個人でレストランへ食べに行く場合はそのくらいの時間を考慮して計画を立てましょう。
短時間で食べないといけない場合はレストランでは無理なので、ファストフードや中華レストラン、セルフサービス、フードコートなどで済ませるしかありません。- レストランでの注文の仕方
特にヨーロッパでは前菜、メイン、デザートの3品とドリンクを注文するのが一般的で、最低でもメインとデザートの2品とドリンクという組み合わせで注文します。日本のレストランなら1品だけで注文しても何の抵抗感もありませんが、ヨーロッパでそれをやると少し失礼になります。
また、ヨーロッパでは日本のようにお水は無料ではなく、ミネラルウォーターを注文するのが普通です。ヨーロッパで食事中、飲み物を何も頼まない日本人観光客がいらっしゃいますが、ヨーロッパの人から見ると非常に不可解な人に映るようで、アルコールが苦手ならミネラルウォーターだけでも注文する事をおすすめします。ただし、薬を飲むためのお水(水道水)なら、頼めば嫌な顔をせずサービスしてくれます。
北米やオセアニアでは、日本と同じように水道水を無料で出してくれるので、飲み物を注文しない地元の人も多く見受けられます。- 料理が多少遅くても文句を言わないこと
一皿食べ終わると少しの間が空いてから次の一皿が出てくるので日本の常識で考えていると遅く感じるかもしれませんが、皿が下げられてから次の料理が出てくるまでの時間は会話を楽しむ時間でもあるのです。
また、飲み物が出てくるタイミングに腹を立てている日本人の中高年男性を極まれに見かけます。日本では食事の前にビールなどの飲み物が運ばれてくるのが常識ですが、欧米では必ずしもそうではなく、あまり気にしていません。特に団体ツアーでは一人か二人ぐらいのウエイターが何十人の飲み物を担当している事が多く、そのような場合は飲み物が後に出てくることも多々あります。多くの方がそのような状況を理解してくれますが、中には理解力に乏しくいつまでも不機嫌そうにしている人がいますが、それを周りで見ている方々も面白くありませんし、見苦しいだけ。気持ちにはゆとりを!- チップを払う習慣?
欧米でもチップを払う習慣が定着していない国もありますが、全体的に見るとチップを置く習慣がある国が多いです。サービス業に従事する労働者の給料はチップによる収入を考慮した体系となっている場合が多く、特にアメリカは完全なチップ社会であるため、日本食レストランであっても忘れないで下さい。
- 小さなお子様がいる場合はご注意を!
- 欧米では夕食でお洒落なレストランへいく場合、小さなお子様は断られることも多いので、年齢制限の確認をおすすめします。日本ではまだ幼いという理由で、子供が少しうるさくても大目に見てもらえることがありますが、欧米はその点はっきりしており、小さな子供でもその場の雰囲気を壊すような行為は許してくれず、騒いだり泣きわめく行為は非常識になります。小さなお子様がいる場合は食事場所を考えましょう。
発展途上国での注意点 常識や非常識
- 衛生環境が日本とは決定的に違う!
海外旅行での注意点として最も重要なことの一つが衛生環境。例えば水道の殺菌消毒が十分でないため水道水は飲んではいけないという国は多々あります。地元の人が飲んでいても水道水は避け、ミネラルウォーターを飲むようにして下さい。
また、乳幼児連れの注意点は、子供は色々な物を触った手をすぐ口へもっていく傾向が強いので、両親がしっかりと注意してあげて下さい。抵抗力の低い子供はすぐ菌にやられてしまいます。- “歩行者優先”の考え方は皆無に等しい
特に多くのアジアの国々や他の発展途上国での注意点として、歩行者優先の常識は完全に無く、車が優先です。また、車を保有する裕福な人の中には歩行者を軽視している人もいるため、こちらが車に再三の注意を払わなければいけません。道路では十分に気を付けましょう。
- 街中で声を掛けてくる人物には要注意!
街中で親しげに観光名所の案内を申し出てくる人物についていき、案内が終わると最後に「案内料をよこせ!」とお金を請求されるトラブルがかなり多いです。無料か有料かを確認し、お金はいらないと言われても必ず裏があると思って下さい。特に発展途上国では、何か見返りを期待して観光客に近づいてくるケースが非常に多く、無償の親切は皆無に等しいのです。
しかし、イスラムの文化では旅人をもてなす風習があるため、見返りを求めずに心から親切に近づいてくる人も実際にいるので、その判断が難しいところ。かなり旅慣れるとその判断も経験や直感が働くのですが…。- チップの上げ過ぎに注意
発展途上国でのチップの注意点として、チップの文化があるのか無いのか?という問題があります。全く必要ない国でむやみにあげてしまうと、今後の観光客にも要求するようになってしまいます。また、通常は必要ないが特定の場面ではあげた方がいいなど様々なケースが考えられますが、あげる場合はその国の物価を考慮して下さい。日本人にはたいした額ではなくても、その国では高額かもしれません。
あげ過ぎはやはり今後の観光客にはもちろん、その人自身にも良くありません。むやみにあげない方がいい場合もあるので、事前にガイドブックなどを読んでおきましょう。- 場合によってはワイロも選択肢に入る
極力避けたい手段ではありますが、国によってはワイロ的に小額を手渡すことでスムーズに事が進むケースが有ります。チップとは意味が異なるので、その辺りの判断は慎重に。これは一般人だけでなく役人に対しても同じです。
注意点は、ワイロの事情は事前に情報を掴んでから実行した方が良いです。情報が無いまま自らワイロを持ち出すことで、余計に話がややこしくなることも考えられるので注意が必要です。
イスラム教諸国での常識・非常識と注意点
- 日本や欧米とはまるで違う文化であることを理解しよう
イスラム文化は日本や他の先進国とは明らかに異なる文化を持ち、考え方や習慣がまるで違います。特に大きな違いが宗教観です。戸惑うこともあるでしょうが、相手国の文化に合わせるよう心がけましょう。
- 女性は肌の露出を避け、男性も極度の露出は避けること
特に女性は出来る限り肌の露出を避けましょう。夏場の注意点ですが、キャミソールやノースリーブは論外です。半袖であっても場所に応じて着られるよう、薄手の長袖やショールを持ち歩くことをおすすめします。
男性もひざが見える短い短パンは避けるべきです。
- お酒は禁止です
お酒はイスラムの聖典 コーランで禁じられているため、一般的な飲食店では飲むことが出来ません(外資系ホテルは飲めることが一般的)。トルコのように街中のレストランで普通に飲んでいる国(東部ではやや批判的ですが)は極めて稀。また、シリアのようにキリスト教徒も多く住む国では、街中で普通にお酒を購入できる場所があるのも事実ですが、一般世論では飲酒に対して否定的な人が少なくいことを自覚した振る舞いを。
- 見知らぬ人にカメラを向ける際はご注意を
イスラム諸国、特に年配者には写真を撮られることを嫌う人が少なくありません。とりわけ女性の場合はその傾向が非常に強く、撮るのであれば声をかけてからにするか(大体が断られると思うが…)、ズームなどで離れたところから撮るなど、あからさまに目の前でカメラを向けることは避けるべきです。
- 女性の方の注意点。イスラム男性が声を掛けてきたら相手にしないこと
イスラム男性が初対面の女性に親しげに声を掛けてくることは、イスラム文化では非常識な行為です。まして、「○○を見に行きませんか?」など、一目のない場所へ女性を誘うことはイスラムの戒律上あり得ない行為です。100%下心があって誘っているので注意するのではなく断固とした態度で断りましょう。
ちなみに、イスラム男性はイスラム女性に対して上記のようなことをすることは宗教上悪いことだとわかっており実行する人は稀ですが、他宗教の女性が相手なら、イスラム教の倫理・常識は関係ないという、都合が良い解釈をしている人が非常に多いのが現実です。そのため外国人女性はターゲットにされやすいのです。
- 左手は不浄の手?
イスラムでは左手は不浄の手という概念が浸透しています。例えば食べ物を直接手で食べる時、人に物を渡す時や受け取る時も通常右手です。特に握手をする際はくれぐれも気を付けましょう。
ただし、イスラム女性は男性と握手することはまずありませんので、男性から握手を求められても、女性は嫌なら断っても失礼な行為ではありません。嫌ならキッパリとお断りしましょう。
- イスラム教は危険な宗教ではありません
イスラム=危険・テロという見方は大変失礼です。確かにイスラム過激派によるテロが多発しているとはいえ、過激派の数はイスラム教徒全体のうちの、ほんの一握りにすぎず、多くのイスラム教徒が過激派を容認していません。
ニュースではテロなどの事件ばかり報道され、良い出来事などはニュースで触れられません。「イスラム教は怖いイメージがある」というのも、メディアが流す情報に踊らされている証拠。 参考:イスラム教への理解
ただ、イスラム原理主義やテロなどの話題は避けた方が賢明。私達からすればイスラム教もイスラム原理主義も同じように映るかもしれませんが、イスラムの人々は原理主義者をイスラム教徒とは認めたがりません。真剣に討論するのであれば十分な歴史の知識を持ったうえで時間をかけること。
貴重品の管理のしかた・方法・注意点
国の治安にもよりますが、筆者がヨーロッパや南米などスリの被害が多い国で実践している事は、「洋服の下に貴重品を隠す」という方法。
筆者が愛用しているのは、首から提げるタイプの貴重品入れ。おすすめです。
どんなにプロフェッショナルなスリでも洋服の下にある物だけは抜き取る事が出来ません。この貴重品入れに入れる物は現金やパスポートなど。場所によってはクレジットカードも入れます。
ただ、入れすぎると厚みが出てしまいバレてしまったり、重くて長時間首に掛けていると肩が凝ってしまうのでご注意。 参考:治安の問題がある場所での貴重品管理
その他、財布などはカバンの下の方に入れておき、カバンを開けたらすぐ財布が見えるような状態は避けましょう。カバンを開けられたら秒速で持っていかれます。特に女性が持っているトートは上部が開いているためすぐに狙われるので絶対に使用しないで下さい。また、男性でズボンの後ろポケットに財布を入れている人を稀に見かけますが、海外では「どうぞ持っていって下さい」 と言っている事と同じです。これぞまさに「日本の常識・世界の非常識」で同情の余地もありません。
その他の注意点として、パスポートはホテルなどに置いて出かけないこと。外国人はパスポート携帯義務があります。また、街中で使う予定が無い現金などは、ホテルの金庫を利用するのも一つの手です。ただし、信用できるホテルであるか? その判断は慎重に。
尚、スーツケースに貴重品を入れて鍵をして外出するのは避けましょう。日本の感覚では「部屋のスーツケースなら安全」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、甘い! 実際にスーツケースから貴重品が抜き取られる事例は多く、これが世界の常識なのです。