JALの展望はいかに? 第5回定時株主総会から切り出す

概要

日本の空でのナショナルフラッグを掲げてきたJALの経営不振は周知の通り。ここ数年の間に起きた機体トラブルの数々や内紛問題などの不祥事が立て続けに起きた結果、顧客はJALからANAへ移っていった。それは現在の株価を見れば一目瞭然。

その後JALは様々な経営再建に向けたシナリオを打ちたて、新町前社長は「黒字にしてみせる」と強気の発言。それゆえ、2007年6月26日、先日行われたJALの株主総会はこれまでにない関心と注目を浴びることとなり、過去最高の4700人の株主出席となり、その一人として筆者も先日JAL株主総会に出席してきた。

総会の様子

まずは会場であるホテルニューオータニへ到着するや、多くの人があふれて少々混乱気味。総会が始まる前からこれでは、この先が思いやられる。とはいえ、もともと今回の株主総会はある程度荒れることは予想していたので特に驚いたわけではないのだが。それにしてもお粗末な対応。筆者も同等の規模の大会で誘導や案内の最前線に立ったことがある経験者から言わせれば、「本当に会場へのスムーズな誘導計画を立てていたの?」と首をかしげる有様だ。

前置きが少し長くなったが、総会が始まってしばらくはJALからの収支報告や今後の見通しなどのプレゼンが順調に進み、ついに株主の質疑へ。前半はくだらない質疑(失礼)が続き、中にはどこかのおじいちゃんが「飛行機に乗る時に耳が痛くなるが、どうにかならないのか? 私はその対策を知ってるぞ!」などという質疑をしだし、本当にくだらな過ぎて会場から笑いの声が聞こえる場面も。ちなみにこのおじいちゃんは強制退去(笑)。そして中盤辺りから熱のこもった発言が始まり、後半からはまともな質疑が相次ぎ随分と厳しい非難や野次が飛び交う、予想通りの荒れ模様。

JALの問題点

その中の株主の一人が質疑で「JALの客の扱いはなっていない! 私はANAもよく利用するが断然ANAのサービスの方が良く、中国のあるキャリアのサービスでさえJALと同等、又はそれ以上のこともある。そこに座っているあんたがた取締役は他社の便に乗ったことがあるのか? どうせ自社のビジネスやファーストクラスの席にしか座ったことがないんだろう! 他社の便に乗って、他社がどういった接客をしているか、あんた達が体験しないでどうする!」「同じ路線でJALとANAを自腹で乗り比べてきたが、断然ANAが良かった。同じ金額なら間違いなくANAを選ぶ!」と熱弁を振るい、会場からは拍手が聞こえた。
株主質疑の中で特に多かったのが「JALとANAの比較」をした内容が非常に目立った。 確かにこの発言は的を得ており、それは筆者も同感だ。筆者の仕事柄、国際線は日常のように利用しており、JALの国際線も年に10回以上は利用する。現場で働くスタッフは皆一生懸命、接客をして対応してくれるのだが、肝心な会社の方針や経営陣の客に対するサービスのあり方には日頃から疑問を感じていた。

そして今回の株主総会でもそれらが強く感じられ、間違いなく客の視点で物事を考えていない。総会の会場への誘導からして考えていないのだから。そして、壇上に座っている取締役の面子もしゃきっとしていない。株主の質疑に対しても、まともな答えを出したのは極わずか。ほとんどが答えになっていなかったし、答え方もマニュアル通り。また、リストラ策などについて解答をした取締役の態度は上から目線で何か偉そう。筆者的には、前社長であった新町会長から何かしら発言があると期待していたのだが、肝心な人が全く発言せずにただ座っているだけという有様。
また、今回の総会ではあまり話題に取り上げられなかったが、8つある組合に対しても、「組合として会社存続の危機感を持っているのか?」という疑問もある。

JALの復活はなるのか?

株主の質疑で多かったのが「新町前社長は黒字を掲げていたのに、赤字とはどういうことだ!」という意見。今回の株主総会の議長を務めた西松社長は「本業での営業利益などは目標を達成し、さらに目標を上回る収益をあげたことなど、確実に再建の道へ前進している」ことを繰り返しアピール。確かに今のJALにアピールできる点としてはここしかない。西松CEOが言うとおり、徐々に改善の方向に進んでいることは間違いなさそうだ。しかし、今後の課題は山積みだ。

筆者が今回の株主総会に出席して思ったことは、経営陣のまずさ。今回の株主総会にはあれだけの取締役が並んだにも関わらず、マニュアルを読んでいるだけの回答になっていない回答、危機感の無さ、パワーを全く感じることは出来なかった。はっきり言うが、あの対応や物事の捉え方は官僚そのもの。あのような官僚主義では完全復活まで先は遠い。現場で働くスタッフ一人ひとりの意見が、JAL経営陣には全く届いていないように感じる。また、組合との関係も非常にぎこちない。それゆえ、半官半民の体制が抜けきれない要因だろう。
また、株主総会ではあまり話題に上がらなかったが、JALの労働組合にも大きな問題がある。つまり、自分たちの首を自分で締めている感が拭えない。
経営陣と労働組合が変わらない限り、大きな変化は望めそうにない。それらが変わった時こそ、JALの復活する時であろう。

付け加えれば、筆者は幼少時代からのJALファンである。一刻も早い復活を望んでいる。



【 旅行情報 TOP 】   【コラム TOP】   【 トラベラーズ・カフェ HOME 】